いぼ痔(痔核)とは
「いぼ痔」は別名「痔核(じかく)」と呼ばれており、発症する場所によって「内痔核」「外痔核」に分けられます。日本人は約3割が痔を持っており、そのうち約6割はいぼ痔だとされています。
内痔核について
内痔核は肛門の内側にできる痔です。ここには知覚神経がないため、痛みがないまま進行し、出血や痔核が肛門から出てきてはじめて気付くケースがほとんどです。
肛門には、出口の約2cm奥に皮膚である肛門上皮と直腸粘膜の境界部分があり、そこは歯状線と呼ばれています。歯状線より直腸側には、網目状に細く枝分かれした静脈が集まった静脈叢があって、排泄の際に過度な負荷がかかるとうっ血してイボのように腫れ上がります。これが内痔核です。
内痔核の原因
- 肛門に負担がかかる姿勢や動作を習慣的に続けている
- 排便の際、トイレで長時間いきむ
- 強くいきんで排便している
- 下痢を繰り返している
- 便秘になりやすい
- 出産
内痔核の症状
- 出血
- 排便時に痔核が肛門から出てくる脱肛
内痔核が排便時に出てくるようになった場合、最初のうちはほとんどが自然に戻しますが、やがて指で押し込まないと戻らないようになり、さらに悪化すると押しても戻らなくなります。また、症状が進むと、排便時以外でも、ちょっと力を入れた際や、歩行時に飛び出てしまうこともあります。
内痔核の症状は状態によって4段階に分類されています。
分類1
内痔核が外部に脱出することがない段階で、排便時の出血がまれに起こります。痛みなどがないため、自覚症状が全くないこともよくあります。
分類2
排便に出血をともなう、あるいは痔核が脱出するが、自然に内部に戻る段階です。日常生活に支障がほとんどない、この段階で専門医に相談することをおすすめします。
分類3
脱出した痔核は指で押さないと中に戻らなくなった段階です。改善のためには専門医の診療と手術が必要です。
分類4
脱出した痔核が指で押しても戻らない段階で、出血の他、痛み、粘液が滲み出してかゆみや不快感が表れます。手術が不可欠ですので、早めに専門医を受診してください。
内痔核かん頓
脱出した内痔核が肛門括約筋によって締め付けられ、腫れ上がって元に戻らなくなっており、早急な治療が必要です。治療では、麻酔をした上で肛門括約筋の締め付けを緩和させ、内痔核を強制的に肛門内へと戻します。基に戻らなくなっています。
強い嫌みや出血をともない、分泌液が出てくる場合もあります。発症のきっかけは、便秘や下痢の症状がある時に過度なアルコール摂取をするなどです。
外痔核について
歯状線より下の皮膚である肛門上皮の静脈叢がうっ血して腫れ上がったもので、知覚神経のある皮膚の部分にできるため強い痛みが特徴です。
外痔核の原因
- 肛門に負担がかかる姿勢や動作を習慣的に続けている
- 排便の際、トイレで長時間いきむ
- 強くいきんで排便している
- 下痢を繰り返している
- 便秘になりやすい
- 出産
- アルコールの過剰摂取
- 香辛料など刺激物の過剰摂取
- ストレス
- 冷え
- 血行不良
外痔核の症状
- 強い痛み
- イボ状のできもの
- 血栓による強い腫れや痛み
- 炎症
外痔核は炎症を起こす可能性もあるため、早急な治療が必要です。
妊娠されている方へ
妊娠時はホルモンのバランスが変化し、痔を発症しやすいとされています。妊娠前から痔の症状があった場合、妊娠をきっかけに悪化する可能性もあります。お腹の赤ちゃんへの安全性も十分考慮した治療を行っていますので、恥ずかしがらずにご相談ください。
いぼ痔の治療方法
薬物治療
軽度の場合、内服や塗り薬などの薬物療法を行います。ただし、痔核の脱出がある場合や、痛みや出血が強い場合には主述が必要です。
手術治療
ジオン注射(ALTA療法)
内痔核に注射するだけの治療法で、現在、内痔核治療の主流になっています。痔核上側、痔核中央、痔核舌側の粘膜下層、そして痔核中央の粘膜固有層の4ヶ所に注射をする治療法で、日帰りで受けることができ、切開の必要がないためお体への負担も軽くなっています。症状により個人差がありますが、通常は治療時に痛みを感じることはありません。日帰りの外来手術ですが、術後は経過観察が必要で、日常生活に関する指示を守っていただく必要があります。
なお、内痔核に加えて外痔核もあるケースでは、ジオン注射と痔核結紮術を併用した日帰り手術も可能です。
痔核結紮術
内痔核と外痔核の両方に適応した手術です。皮膚を切開して内痔核を内括約筋から剥がし、痔核の根元を縛って切除するので、痔を完全に治療できます。日帰りで受けられますが、入院して受けることもできます。